その図面、NGです!~スタイリッシュな間取りの盲点とは?~Vol.4

一級建築士事務所スマイリズム堀野和人さんのコラム。今回はスタイリッシュな間取りのデメリット面に焦点をあてて辛口にチェックして頂きます。


スタイリッシュな間取りの盲点とは

今回チェックする図面は「暮らしやすさ実感。家族がリビングに集まりたくなる家」です。スケルトン階段、吹抜けを含む20帖のLDKと畳コーナーまで連続した大空間が伸びやかで大変スタイリッシュ。しかしそういった家は散らかりやすいのが難点で、日々の片付けのしやすさが重要になってきます。収納は充分か?プライバシーはどうか?等を中心にチェックしていきます。


プランコンセプト

・暮らしやすさ実感 ・家族がリビングに集まりたくなる家

概要

延床面積 94.19㎡(1階床面積49.07㎡/2階床面積45.12㎡)


NG① 玄関に窓がないから暗く湿っぽい空間に

シニアカーなどの置き場に配慮されているのは良いが、窓がないので暗くて湿りがちになる恐れが。広いだけに散らかりやすく、扉で区切って土間収納にする考えもあっても良いのでは?


NG② 玄関にトイレを配置するのは極力避けて

玄関に隣接し、ホールに向かって開く扉があるトイレは、音や臭い等のプライバシーに気を遣いながら生活する必要がある。玄関の見栄えも悪い。


NG③ 収納の配慮が全くない洗面室…

洗面化粧台と洗濯機だけで収納がない洗面室だ。洗面室の引戸の位置を上下反転すると、洗濯機前に収納スペースができるが、今度はLDKのテレビの配置場所に困る。また出入口がリビングのドアに隣接し動線が重複している。ソファーから洗面室への出入りも見えてしまう配置になっている。


NG④ リビングへの遮音の配慮不足では?

浴室や洗面室は、シャワーやドライヤーや洗濯機の音が響きやすい空間だ。開き戸に比べて引戸の遮音性が劣る為、ソファで寛いでいる家族に音が漏れ伝わってしまいそう。遮音性能の高い壁や扉を付ける等配慮が必要だ。


NG⑤ くつろぎ空間の分散に繋がるかも

通過動線が多いソファスペースより、畳コーナーをメインのリビングに計画した方が居心地が良いのでは?家族全員がテレビの前で団らんする時代ではないが、ソファスペースと畳コーナーでくつろぎ空間の分散につながる可能性がある配置だ。


NG⑥ 背面収納はできればキッチンと同幅に

収納幅が短いためキッチンに吊戸棚をつけ、背面収納はカウンタータイプでなくトールタイプにすることを推奨する。ダイニング横の収納にキッチン関連物品を分散収納することも必要である。


NG⑦ 1階の収納量が不足していないか

ダイニングの収納は本、書類、文具、薬品等が収納できるが奥行きが浅い。畳コーナーの物入も座布団入れの収納と考えられる為、古新聞や掃除機、買い置き品等の収納が不足している。2階の物入はトイレを正面入りにすれば奥行が深くとれる。


NG⑧ 矩形でない部屋は非効率で使い辛い

計画性がなく、結果として余ったスペースを部屋として取り込んだために、凸凹な形状の空間ができたと考えられる。内観、外観ともに線の少ないシンプルな家づくりは意外と難しいものであるが、こうならないように心掛けたい。


NG⑨ 風通しの悪い子ども室

連続している5.25帖の部屋は繋げてよし、独立してよしではあるが、窓が1方向にしかなく、風通しが悪い。北側の部屋は西側に窓を追加して2方向にし、南側の部屋は入口扉の欄間を開放させる、換気扇をつける等して通風に配慮したい。


一級建築士事務所 スマイリズム. 堀野和人代表

ゼネコンで現場管理業務に従事し、その後ハウスメーカーの設計部門を経て、2014年に一級建築士事務所スマイリズム.を設立。地域の住宅販売会社と設計提携するなどして、より設計品質の高い住宅の普及を目指して活動する。本業の他、地域のまちづくり活動や、里山保全活動にも積極的に取り組む。



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