伸びる会社の人材育成~評価制度開始で脂が乗った30代が変わる

増子建築工業は評価制度を開始することで、脂が乗った30代の意識を変えた。やるべきことが明確になり、社員のモチベーションが上がってきたと言う。



「やるべきこと」を明確化

「何をやればいいのか明確化されておらず、物差しがなかった」というのが、かつての増子建築工業。これを変えようと評価システムを開始したのが2019年頃だ。

どうすれば評価されるか、何をやれば上に上がれるかを示すと、社員のモチベーションが上がってきたと言う。特に、30歳前後の主任クラスに見えた変化が大きかった。

「以前は若手でもベテランでもなく中途半端なポジションでした。何をしていいか分からない”野放し世代“。この世代は脂が乗ってくる一方で、慣れて手抜きを覚えたり、我流で物事を進めるようになるのが『あるある』だと思います。評価制度の運用をはじめて、この世代の意識が特に変わったし、離職も減りました」


「やりたい」と方針は違う

設計部門に性能評価や構造計算が苦手という社員がいたことがある。コーディネートが得意なのでそれをやりたいと話していたが、EX(営業)への部署異動を決定した。同社では性能や構造を重視しており、コーディネートの比重は軽いため。そうした方針を明確化する中でやめていく社員もいたが、それは必要な離職と捉えている。



会社方針から個人目標を設定
ブレなく同じ方向に進む

同社の評価制度は_一本柱だ。ひとつは、社員のグレードと職種ことに目指す要件を設定。達成度を5段階で評価するもの。

もうひとつは、会社方針に紐づいた個人目標を立てて、その達成度を測るというものだ。

社員はこれら2つの達成度を毎月自己評価しアプリ上で提出する。それに対して上長がコメントをフィードバックするのが基本の流れ。半期に1度は、本人と上長、社長による三者面談も実施している。

「こうあるべきだという方針を打ち立てて、ブレなく同じ方向に進んでいくのが一番力を発揮する」。そこに力を一番入れていると、増子則博社長は話す。

そのため期の初めに社長が会社方針を発表。そこから経営目標、部門目標と落とし込んでいき、最後に個人目標にブレークダウンする。

全体方針が無いままに個人がそれぞれ目標を立ててしまうと、ちぐはぐになってしまう。「行動してくれるのは社員。全体方針とズレてしまうと力が発揮されません」


評価は会社方針とリンクさせる

▲面談では「肯定」が基本 致命傷は1ミリも得にならない

「面談の際は、できるところを見つけて極力肯定していきます。脱皮してほしい重要な局面ではリクエストを伝えますが、淡々と。「こういうところあるじゃん?」と重くならないようにと心掛けています」

「ゴリゴリ怒ったり、ダメだしすることはしません。目的は、よりよくなってもらうことです。致命傷を与えても、1ミリも得になりません」



《実例を拝見》半期に一度、成長テーマを決定

G(グレード)2社員Aさんの成長テーマ&個人目標



G3に上がるのが難しい

G2からG3に上がるのが難しく、この突破がチャレンジング。上がるためには、国家資格の取得を要件に入れているためだ。

設計なら建築士(1級・2級・木造)、技能なら建築大工(1級・2級)技能士、営業なら宅建士。

「残業で小銭を稼ぐより、家に帰って勉強して上に上がろうと話しています」



《もっと深掘り!》聞いてみたいことQ&A

増子建築工業は、ヒトに焦点を当てた施策で粗利益率を改善したり、リノベ単価を向上させたりしている。もっと詳しく、あれこれ聞いてみた。


Q 前期の会社方針は?
A 全員で攻めて全員で守る

どのセクションでも数字を獲得していって、集客も全員で取り組もうと話しました。

大工さんなど、営業から離れるとそこへの意識が遠のきがち。それは違うよ、みんなでインスタに出たり、みんなで盛り上げようと話しました。

インスタで大工の仕事風景をリールで上げ始めたところ、リノベーションの単価がそれまで1500~2000万円だったところ、3000万円にまで上がりました。


Q 大工さんが目立ってる?
A うちは大工の会社

大工には施工者としての働きだけでなく、アイコンとしての効果もあります。大工が活躍している会社として訴求し信頼を獲得しています。大工って一般の方からすると手を動かしてモノをつくっていく魔法使いみたいな存在。処遇も上げていい人材が入社してくる道筋をつけたいです。


Q 評価以外で効果のあった人事施策は?
A 設計でも土日勤務

以前は、設計は土日休みの社員がいっぱいいました。数字は追わなくていいですが、顧客とは接してほしいと思い土日勤務に変更。はじめは抵抗がありましたが、目の前にお客様がいて、直接やりとりしてモノができていくのはやりがいでしかない。成長する環境も手に入って、より活躍してくれるようになりました。生産性が上がり、利益率も高まりました。



お話をうかがったのは…

増子建築工業(福島県郡山市)代表取締役社長 増子則博さん

創業は1968年。自社で職人を育てている。「リリこ」の屋号で2017年から本格的にリノベーション事業を展開。2024年2月期の会社売上高は5億4000万円。その内、リフォーム・リノベーションで3億円弱。社員数は23名。



リフォマガ2024年7月号掲載

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