高校の野球部で活躍し、卒業後そのまま自動車会社へ入社した中島さん。どんな業種であっても「相手の話を聞くことが営業」という姿勢を崩さず、顧客を自分のサポーターに変えてしまう。
▲イメージメーク・ハウス(埼玉県北本市)取締役 営業統括本部長 中島 和人さん(60)
自動車会社で30年バイヤー業を勤め上げ、50歳の時にリフォーム業界へ転身。入社6年、営業歴は10年。現在は営業統括本部長として、13名の営業スタッフを束ね、全体の指揮をとる。
「八聴二話」でファン獲得
評判広がり紹介8割
家具製造・販売を行う長谷川産業グループの中で、住宅リフォーム業を手がけているイメージメーク・ハウス。リフォーム売上高年間約10億円達成に大きく貢献しているのが、入社6年、営業統括本部長の中島和人さんだ。
中島さんは、紹介受注率が高い。以前勤めていたリフォーム会社は訪問営業だったが、案件の8割は紹介からだった。特別なアフターフォローをしているのではなく、リフォーム後に満足した顧客が中島さんのファンになり、どんどん繋いでくれた。
顧客満足度を上げるために必要なのは「八聴二話」、8割は相手の話を聞くことだと中島さんは言う。
「私は話好きですが、営業の時はとにかくお客様の話を聞きます。不満や不安を取りこぼさない、言いたいことをすべて話してもらう、営業はこれに尽きます。全部聞いたあとで、こちらからこうしてみては、と提案する。営業ばかりが話すようなバランスでは、うまくいかないですね」
自動車会社バイヤーから一転
リフォーム訪問営業へ
埼玉県生まれ、高校球児だった中島さん。高校卒業後すぐに日産自動車に就職。主にバイヤー職として、国外での買い付けや部品調達に勤しみ、営業も修行として3年ほど経験した。
管理職に就いていた50歳の頃に、転機を迎える。社内事情により会社との方向性にずれを感じ、中島さんは退職を決断。
「しばらくゆっくりしようと思ったのですが、落ち着けない性格で(笑)。紹介されたのがリフォーム営業でした。日曜大工が好きだったし、住宅関連には興味がありました」
訪問営業のリフォーム会社へ面接に行くと、その会話力で即採用、入社後すぐに一人でエリアを任された。
しかし、まったくの業界未経験、鳴かず飛ばずの毎日が続く。辞めようかと考え始めた頃、ある顧客と出会ったことをきっかけに、中島さんは自分の営業の方向性を掴み、リフォーム業界でやっていこうと決意する。
3年で300人の紹介に
黙っていても受注できる
「入社4カ月くらい、もう売上はいいやという気持ちで訪ねたお宅で、前職の経験から車の話で盛り上がりました」
一度打ち解けると、会話の中で自然と家に関する話を聞けるようになった。聞き役に徹した中島さんは、奥さんが住居のどこに不満を持っている、金銭の主導権は旦那さんと、現状を細かく聞いていた。
「何回目かの時に『まだ売上ないなら、100万の予算でうちを自由にやってよ』と。自分の家のつもりで、それはもう一生懸命やりました」
中島さんの提案に大満足した夫婦は、結果300万円のリフォーム工事を依頼してくれた。さらに中島さんを気に入った施主は、「これだけのリフォームをしてくれるんなら、俺が紹介してやる」と周囲の知人へ評判を広めてくれた。
「銀行の理事長で非常に顔が広い方で。どんどん紹介でつながっていって、『中島をサポートする会』が出来上がっていました」
3年間で300名近くまで集まり、中島さんを囲む会がホテルで開催されたことも。この頃には、待っていても相談がくる状態になった。
「満足してくれれば、黙っていても紹介してくれる。ものを売ることより、相手が思っていることをいかに聞き取れるかが営業の仕事だと実感しました」
断られて当たり前
好印象を残せば良し
イメージメーク・ハウスに転職し、営業統括本部長になった今は、仕事の9割の時間を指導・管理業務に充てる。
「今はゴリ押し営業の時代ではないですよね。営業で大事なのは、いかにお客様に安心感を与え信頼してもらえるか、だと考えます」
例えば商談では、すぐ相手の懐に入り込めるかより、良い印象を持ってもらえるように指導する。
「初回ですべて聞き出せなくていい。聞きすぎて相手に引かれるくらいなら、むしろ挨拶程度でも、好印象さえもってもらう方が大事。そうすれば2回目、3回目を快く受け入れてもらえますから」
後輩たちにも「断られて当たり前」と声をかける。断られるのが続いているスタッフには、OB客まわりを勧めたり、自身が一緒について行ったりして、商談の機会を多くもたせ、自信をつけさせる。
定期的な会議では不安を聞き出し、サポートにあたる。対顧客であっても、対スタッフであっても、対人関係において聞くことが重要なのは変わらないからだ。
▲社内で指導にあたる中島さん。顧客の視点にたって、細かく見積書を作成できているか確認している。
契約をゴールにすると
顧客の気持ちと乖離する
「訪問営業と反響営業の違いは、お客様との出会い方くらいです。営業で大事なのは共通して、聞くことと寄り添うこと」と中島さんは言う。
「営業は契約をもらうことがゴールになりがちですが、お客様は契約してからもどんどん気持ちが盛り上がっていきます。ここで気持ちの乖離があると、クレームや満足感を下げることにつながりますから、要注意です」
契約後も顧客に寄り添い、丁寧な仕事の積み重ねることで、後輩たちにも自分のサポーターをつくっていってほしいと話す。
「今の目標は、1日でも長く働きたいと思ってもらえる、居心地の良い会社にすることです」
▲中島さん愛用のアイテムはツボ押しグッズ。手のツボを刺激するもので、営業中は常にポケットに忍ばせている。いつでも平常心を保つため、特に顧客宅訪問時には必ず、掌の中で一握り!
訪問営業からリピーターに
訪問営業で尋ねたお宅で、親身になって話を聞くうちに信頼を得た。初めはユニットバスからユニットバスの入れ替え工事を受注。
色やデザインにこだわりがある施主だったが、打ち合わせに時間をかけ、満足のいく仕上がりに。
するとその後、システムキッチン、トイレ、洗面化粧台と、依頼が続くこととなった。
リフォマガ2024年4月号掲載
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