今月の輝く!リフォームセールス~人と人との信頼関係は小さな約束事の積み重ね

今回登場するのは、ハートホームの社長・髙松篤史さん。初回の丁寧なヒアリングと、その後のこまめなコミュニケーションで、信頼関係を築いている。

▲ハートホーム(東京都豊島区)代表取締役社長 髙松篤史さん(43)

兵庫県神戸市出身。中学生の時、阪神・淡路大震災を経験する。リフォーム会社を経て、WEB広告などIT関連会社に就職。その後、再びリフォームの仕事に戻り、38歳の時に独立した。



阪神・淡路大震災がリフォームに進むきっかけ

髙松篤史さんがリフォームの仕事に携わるようになったのには、阪神・淡路大震災が大きな影響を及ぼしている。

被災当時、髙松さんは中学2年生。自宅マンションは無事だったが、祖父母の家が倒壊。解体や瓦礫の処分などは家族総出で行なった。その後1年かけて祖父母の家を再建。髙松さんは大工さんの仕事を手伝いながら、下地作りから家が完成するまでを体験した。

一度はWEB広告の仕事に就いた髙松さんだが、もの作りが好きだったことや、リフォーム関係の友人が増えたことから、2017年にハートホームを設立した。

現在、髙松さんを含め5人の営業、8人の職人、4人の内勤者がいる同社。東京を中心に一都三県の仕事を請け負っている。



営業職と社長、2つの立場で営業活動

髙松さんは営業をする上で、「営業マンとしてのスタンス」と、「社長としてのスタンス」の2つがあると考えている。営業マンとして重視しなければならないのは「売上」だ。しかし、社長としては「会社のブランディング」ができているかも考える。

顧客が一番喜ぶ施工やサービスを提供することを打ち出している同社。売上を追求するだけでは会社のブランディングはできない。髙松さんはこの2つのバランスをとりながら、営業活動を行なっている。

「最初の現場調査の段階で、『このお客様は見込みが薄い』と感じたら、営業マンなら効率を考えて深追いをしないこともあると思います。しかし、社長としては、『このお客様は一体何を求めているのだろう』と丁寧にヒアリングすることで、会社のイメージも大切にしたいのです」

髙松さん個人の年間の営業実績は約1億5000万円。バリバリ営業をかけたら、その2倍の数字が達成できるところだが、「売上にこだわりすぎると、無茶な営業をかけかねません。そうならないように気を付けています」

▲日中は現場を回ったり、顧客と打ち合わせをすることが多い髙松さん。社長としての業務は夕方会社に帰ってから行っている



初回の現場調査が勝負
依頼された以外の場所も調査

髙松さんは初回の現場調査に一番時間をかける。戸建てなら1〜2時間。それ以上かかることもある。

問い合わせが多い雨漏りの相談の場合、場所の特定に高所カメラ、内視鏡、サーモグラフィなどを駆使。雨漏りなどの調査はすべて無料で行なっている。「ここまで調べてくれるなら…」と信頼を得て、その場で契約が取れることもある。

依頼されていない場所でも、調査をして問題があると思ったら、髙松さんは修理を提案する。修理するかどうかは顧客に任せる。こうした提案は追加受注が取れるメリットがあるが、「お客様が知らなかった事実を伝えることが最優先」と髙松さん。

実際、ベランダの波板の交換を依頼され行ったところ、ベランダのサイディングが浮いていて水を吸っていた。このままでは防水できないことを顧客に伝え、サイディング舗装と外壁塗装の工事につながった例もあった。



「いくらでもいい」は嘘
金額の上乗せは失敗する

「お客様が『お金をいくらかけてもいいから直したい』というのは、嘘だと思っています」と話す髙松さん。

その言葉を信じて、見積もりの金額を上乗せするのは、「失敗するパターン」(髙松さん)。気前がいいと思っていた顧客でも、数社から相見積もりを取り、金額や工事内容を比較している。実際は見積もり金額の安い会社と契約することも少なくないからだ。

「それに『いくらかけてもいい』というお客様は、どうリフォームしたいのか、イメージが漠然としていることが多いです」とも髙松さんは言う。

逆にイメージをしっかり持っている顧客は、大まかな予算も決めていることがほとんど。「お話を聞いて、ハキハキと受け答えされるお客様は契約につながりやすいと感じています」



連絡頻度が上がれば成約に結びつきやすくなる

初回の現場調査でのヒアリングを大切にしている髙松さんだが、「1回会っただけで、お互いを100%理解するのは無理です。人と人との信頼関係は、『小さな約束事の積み重ね』によって、築かれると思います」と話す。

不満のない契約を目指すには、それまでに顧客といかに細かくコミュニケーションを取るかがカギだ。

髙松さんは初回時に顧客とラインを交換する。その後は顧客からの問い合わせにこまめに回答していく。

「心配性のお客様からは、毎日でも連絡がくることもあります。でも、それだけ本気の証拠。私は質問に答えるだけで、連絡しても営業はかけません」

それでも、連絡頻度が上がれば上がるほど、成約に結びつきやすくなるのだとか。小さなことにも丁寧に対応する姿勢が信頼を生んでいる。



雨漏りから始まり、合計450万円の受注

髙松さんが手がけた案件の一つに、住居を兼ねたビルのリフォームがあった。築40年以上の3階建ての鉄骨ビルで、最初の依頼は雨漏り修理だった。

調査の結果、雨漏り以外に外の鉄階段が錆びて危険な状態になっていることが発覚。取り替えると200万円近くかかるが、髙松さんは溶接で修理できると判断。60万円の見積もりに顧客は納得し、雨漏り修理とセットで工事をすることになった。「この件で、無茶な営業はしない会社だと思ってもらえたようでした」と髙松さん。その後も外壁のタイル洗浄と補修、物置の修理なども依頼され、トータルで450万円もの受注となった。

実はこのビル、ビルの隣にある工務店が建てたものだった。どうやら雨漏りは、屋上のシート防水部分に釘が打ってあったことで発生したことが髙松さんの調査により判明。顧客は隣の工務店ではなく、ハートホームを選んだ。

▲髙松さん愛用のアイテム。内視鏡、サーモグラフィ、カメラ、レーザースケール、スケール、ノギス、打診棒。この他、高所が撮影できる装備もある



営業と職人が一丸となって礼儀正しく

社長として髙松さんが常に社員に言っているのは、「現場での礼儀を大切にすること」。相手の立場に立って当たり前を遂行することが大事だと考えている。

まず、現場では無駄な私語はしない。たわいない会話でも、在宅している施主にとってはイライラの素になる。大声を出さないと聞こえないような時は、ハンズフリーイヤホンでスマホを通して会話する。施主や近隣の人への挨拶も欠かさない。特に外壁の高圧洗浄の日は、汚れが飛ぶので必ず通知する。

「現場の職人の行動はよく見られています。一度悪い評判が立つと、その後仕事が来なくなります。しかし、逆に評判がよければ、次の仕事につながります。営業も職人も一丸となって、礼儀正しくありたいと思っています」



社会貢献をすることが今後の会社の課題

髙松さんは今後会社として生き残っていくには、SDGsについても取り組んでいかないといけないと考えている。

「現場で余った資材や廃材。そうしたものをリサイクルできたらと考えています。そうした社会貢献活動をしていかない限り、今後、会社は生き残っていけないのでは、とも考えています」

▲髙松さんが担当した、分譲マンションの売買前のフルリノベーションした案件。水回りの交換も含め、工事金額は450万円。施工前は和洋室の古いデザインだったが、リノベーション後は、若い方にも目が留まるよう黒と白を基調とした高級感ある仕上がりを目指した。この物件は内覧後、即完売になった




リフォマガ2022年10月号掲載

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