今月の輝く!リフォームセールス~顧客がファンになってしまう女性社長 笑顔・挨拶・まめな連絡でお客様を不安にさせません

今回登場するのは、ホームインスペクションとリフォームを行う会社の女性社長・有田康子さん。センスあふれる提案と安心感のある仕事ぶりに、多くの顧客がファンになってしまうという有田さんの仕事術を紹介する。

▲R&R・co(神奈川県横浜市)代表取締役 社長 有田 康子さん(53)

福岡県出身。愛知県で就職・結婚・出産を経て、元々興味のあったインテリアコーディネーターや二級建築士の資格に挑戦し合格。子供が小学校に上がったのを機に、大手住宅設備会社のショールームアドバイザー、オーダーキッチンメーカーでのキッチン設計を経験。神奈川県に転居してからは大手ハウスメーカーや中小リフォーム会社でのリフォーム営業を経て、2018年に起業。二級建築士、インテリアコーディネーター、既存住宅状況調査技術者



まめに連絡することで顧客の不安を最小限に

ホームインスペクション(住宅診断)を強みとするリフォーム会社、R&R・co。長年リフォーム業界で様々な業務を経験してきた有田さんは、営業で大切なことは「笑顔」「挨拶」「まめな連絡」と言う。

「笑顔と元気な挨拶は、人間関係を作る第一歩。最初の印象が良ければ、その後の話はスムーズに進むと私は思っています。新人でもベテランでも、それに尽きると思いますね」。

まめに連絡することも、工事を最後まで円滑に進める秘訣だ。

「工事が終わるまで、お客様は常に不安です。私は些細なことでも連絡を入れ、安心してもらうようにしています。そうやってコミュニケーションを取らないと、不安はいつか、怒りになります」。

現場の近くに行ったら顔を出す。行けない時は「今日はこの工事で、こんな職人さんが入ります」と連絡を入れる。連絡方法は顧客の使いやすい方法に合わせて、LINE、メール、ショートメッセージなど使い分ける。

顧客によっては夜にしか連絡が取れないこともある。ずっとスマホを手放せないが、上手に顧客とキャッチボールをすることで、トラブルを回避でき、さらにはファンになってくれると有田さんは話す。

「工事が終わっても『この頃、有田さんの声を聞いていないな』と連絡をしてくれます。それが次の仕事につながります」。

同社のリフォーム工事の8割は、紹介とリピーター。確実にファンを獲得している。

▲運動不足解消や腰痛予防のため、事務所で仕事をする時はバランスボードに立ったり、フィットネスバイクを漕ぐ。体力は大切



契約前でも先回りして工事の予定を組んでしまう

大手ハウスメーカーのリフォーム営業として、全国2位の成績を挙げたこともある有田さん。

営業成績を上げられたのは、契約前でも工事完了までのスケジュールを組んでしまう、素早い提案にあった。

「5月末までにキッチンリフォームを終わらせたい場合、逆算して、次の打ち合わせの日時や、ショールームに行く日など、すぐにスケジュールを組みます」と有田さん。このスケジュール通りでないと、望む日までに工事が終わらないということがわかれば、顧客はそれに合わせて予定を立て始める。また、契約が決まれば、すぐに着工できるという利点もある。

『この線路に乗ればゴールにいける』という目標設定を早い段階で提示することが、成約率を上げるポイントとなっている。



最初の打ち合わせでリフォーム費用を伝える

有田さんはリフォームにかかる費用も、最初の打ち合わせで伝えるようにしている。予想が外れる怖さもあるが、「最初にはっきりとしたゴールまでの筋道と、おおよその金額を伝えることで、お客様からは頼もしく思ってもらえます」と有田さん。相見積もりになった場合でも、金額を示すまで2〜3週間かかる会社に比べて、早い方がアドバンテージを持てると話す。

それに、最初に金額を伝えておくことで、顧客にとっては、費用の捻出方法や設備のランクをどのくらいのものにするかなど、考える時間が生まれる。次の打ち合わせまでに、心づもりができている状態になるのだ。

「正式な見積もりを出した段階で、『他の会社は断りました。お願いします』と言われることも多いです」と有田さんは話す。



顧客の心の声を引き出すプラスアルファの提案

「こんなこと言ったら、リフォーム会社の人に笑われる」「どうせ、こんな風にはリフォームできない」。

そう思って、自分の本音を言い出せない顧客もいる。そんな顧客の心の声を、有田さんはプラスアルファの提案で、うまく引き出している。

例えば、マンションのキッチンリフォーム。前のキッチンも壁付きだから、同タイプにしか交換できないと思っている顧客に「対面式にしたいと思いますか?」と一声をかける。「できるんですか?」「できますよ」という会話から、顧客のワクワク感が高まり、リビングなど他の箇所のリフォームを提案しやすくなる。

顧客と一緒にショールームに行った時は、顧客の視線の先に注意する。ピンクの壁紙を見ている妻に「ピンクもいいですよね」と話しかけたら、「そう?でも、お父さんの手前、言えなかったの」と本音がこぼれたこともあった。

有田さん自身、本音がポロっと出る時は、ついタメ口になってしまうのだそう。「やっぱり、食洗機がないと大変じゃん」「あ、この色、めっちゃいい」といった具合だ。

子どもの頃、兵庫など関西圏で育った有田さん。一人でボケてツッコむ、会話の最後にオチをつけるなど、顧客との会話を笑って終わらせないと気が済まない。サービス精神旺盛な会話で、顧客との心の距離を上手に縮めている。

▲リフォームをしてくれた顧客には、ビフォア&アフターをフォトブックにしてプレゼントしている。これを見せて知人に自慢する顧客も多く、そこからリフォームの依頼もくる



顧客の好みを知るにはインスタグラムが便利

顧客の好みを知るため、有田さんは顧客のインスタグラムを見せてもらうことがある。きっかけは30代の女性が「こういうキッチンが素敵だと思っているんです」と自身のインスタグラムを見せてくれたこと。

「ああ、ヒアリングをしなくても、ここにお客様の好きなものが詰まっていると思いました」と有田さん。

シャビーシックが好き、植物のある空間が好きといったことがわかると、それに合った提案することで、すぐにプランが決まると言う。

「私はなんでもいいんです」と言う顧客もいる。有田さんは「でも、本当はなんでもいいとは思っていないんです」と言う。

そうした顧客には、「今はこれが流行ですよ」などと早めにサンプルを持っていく。すると、「こっちの方が好きかな」と選び始めてくれ、話を進めやすくなると話す。

▲息子の川本絢也さんは取締役。JSHI公認ホームインスペクターとして、有田さんの右腕となって活躍している



ホームインスペクションは女性に適した仕事

有田さんは起業した時、「ホームインスペクション」を軸に事業を展開しようと考えていた。起業したのは2018年7月。同年4月から法改正により、中古住宅の売買を仲介する際、不動産会社は顧客に対して、ホームインスペクション制度について説明することと、希望する顧客にはホームインスペクションをする業者を斡旋することが義務化された。

有田さんはこれまで多くの場で、工事開始後に予想外のことが分かり、トラブルになるケースを見てきた。リフォーム会社の人間がホームインスペクションの知識を持つことは、こうしたトラブルの防止になると考えている。

有田さんは「ホームインスペクターは女性に向いている仕事」とも語る。

これまでの住宅診断というと、屋根裏や床下に頭を入れて、目視で確認する方法が多かった。夏場の屋根は60度を超えることもあり、キツく辛いイメージがある。

有田さんの会社では床下の点検は、岩場も走れるラジコンを改造した、4Kカメラを搭載したオリジナルマシンで調査。屋根裏はカメラを装着した自撮り棒で、屋根の診断にはドローンを使うなど、軽くて扱いやすい機器を駆使。女性でも行える方法を編み出している。中立的な立場で、顧客と業者の橋渡し役となるホームインスペクターは、きめ細かい気配りができる女性に向いている。

「慣れてくれば、2時間ほどで調査は終了。子育て中にリフォーム会社に勤務するのは厳しいですが、ホームインスペクションなら週1〜2件ペースで、午前中に調査に伺って、子どもが帰ってくる時間には自宅に戻り書類の作成をする。出勤する必要がなくリモートワークができるのです。さらにリフォーム会社に就職する際は経験や実績としてアピールできます。今後はホームインスペクションをもっと一般的な仕事として広めていきたいです」と有田さんは話している。

▲ホームインスペクションに使うツールの一つ、ドローン

▲このドローンを使って撮影した映像。事務所の屋根にソーラーパネルを設置した時のもの。4Kカメラで撮影しており、アップにすることで、詳細な状況がわかる

▲床下の点検に使うラジコンは、川本絢也さんが製作。4Kカメラ、ライトを装着している。ラジコンが動き出すと、現場が『おおおー』と盛り上がるのだとか



リフォマガ2022年4月号掲載

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