今月の輝く!リフォームセールス~あえて目標粗利を下げる 精神的余裕を持ち元の目標以上を達成

今回登場するのは、笑顔が魅力的な石川愛香さん。明るく、笑顔で顧客とコミュニケーションをとり、満足度100%のリフォームを実現させている。

▲暖喜(茨城県牛久市)石川 愛香さん(46)

シングルマザーとして派遣社員として働いていた39歳の時、ママ友でもあった暖喜の石田和子専務の勧めで、同社に入社。入社8年目を迎える今年、営業成績コンテストで、女性部門1位を獲得した。



苦手だった営業職で女性部門トップに

2021年、一般社団法人JACKグループが実施した「J–1グランプリ」において、女性営業社員にスポットを当てた新設部門「J–クイーン」で、前期の部1位という、輝かしい成績を獲得した石川愛香さん。このコンテストは、毎月の契約と完工の平均値(契約粗利額+完工粗利額÷2)を前期(2〜6月)、後期(8〜12月)で競うもの。一気通貫で仕事をする営業を対象にしており、石川さんの平均値は246万6919円。エントリーした15名の女性の中でトップであると同時に、コンテスト全体でみても、好成績だった。

「私自身は全然優勝できるとは思っていませんでした。実はエントリーしていることも知らなかったんです(笑)。でも、優勝の連絡がきた時は、『これだけやれたんだな』と思い、嬉しかったです」

目覚ましい営業成績をあげている石川さんだが、以前は、営業職が苦手だった。化粧品の営業をしていた時はストレスで10kgも痩せてしまったほどだ。そんな石川さんをリフォーム営業に誘ったのは、暖喜の石田和子専務。子ども同士が同級生で、一緒にママさんバレーに参加する仲。シングルマザーで契約社員として働いている石川さんを近くで見ていて、正社員になることを勧めたのだ。「子どものためにはやるしかない、と覚悟を決めて入社しました」と石川さんは当時を振り返る。

入社前にはネットで建築用語を調べて、何十枚もプリントアウト。時間がある時に繰り返し見て用語を覚えた。入社後は工事の様子を見学したり、時には一緒に風呂の解体をやらせてもらいながら、リフォームについて勉強。2年目からは一人で営業に行けるようになった。

▲暖喜の牛久店のショールーム



目標金額を下げたら、気持ちが楽になり売上アップ

現在、石川さんの月の売上目標は粗利150万円だ。以前は200万円だったが、それを下げてもらった経緯がある。

「店長と社長に、『200万円は精神的にも体力的にも難しいです』と相談しました。一気通貫なので、営業をしながら現場も回るのが大変で、目標を下げていただいたんです」

しかし、実際は月平均240万円を超える実績を達成。目標金額を下げたことで、以前の目標をも上回る成績をあげている。

「50万円下がっただけで、精神的に全然違うんです。私の場合は150万円になったことで気持ちがとても楽になりました。以前は目標を達成しようと、目の前しか見えなくなっていました。しかし、余裕ができたことで、視野を広げることができ、周りの若い社員の様子も気遣えるようになってきました」

気持ちの余裕は、笑顔にも現れている。今はコロナ禍でマスクが外せないが、目だけでも笑顔が伝わるように、目尻を思いきり下げているという石川さん。特に初対面の時には笑顔を絶やさず、顧客の緊張を解くように心がけている。



「女性のあなたが来るの?」を笑顔で吹き飛ばす

新人時代、石川さんが大変だと感じたのは「女性である」ということ。

「電話で現場調査のアポを取ろうとすると、『え、女性のあなたが来るの?』と言われたことが何回もありました。最初は凹んでいましたが、段々慣れてくると、それを笑いに変えるようにしたんです。『はい!私、女性ですけど大丈夫ですよ〜!』というと、お客様も笑ってくれます」と、石川さんは明るく話す。

「現場調査に私がやってきて、ご主人がびっくりされることもあります。そんな時は、ギャップを逆に利用して、しっかり説明することで、『女性だけど大丈夫なんだ』と信頼していただけるようにしています」

石川さんはお客様のタイプによって、話すスピードを変えている。お客様がゆっくり喋る時はゆっくり喋り、早口の人には早口で喋る。

「ゆっくり話す方は、早口で話されると話されていることがわからなくなってしまうのかなと思いますし、早口の方はゆっくり話されるとイライラすると思うんですね。お客様との会話はテンポは非常に大事だと私は思っています。その上で、お客様の話によく耳を傾けることが、営業の要だと思います」



収納に扉はいらない⁉どうする?キッチン交換

「やっぱり、石川さんに頼んで良かった。石川さんは家族みたいな人だから」

あるキッチン交換の工事で、石川さんは顧客からそんな嬉しい言葉をかけられた。石川さんの中でも特に心に残っている工事の一つだ。

この施主は、石川さんが初めて外壁塗装を担当した顧客だった。以来、トイレ交換や内装、和室をフローリングにする工事などを次々とリピートしてくれている。

そうした工事で家に入るたび、石川さんは気になっていたことがあった。キッチンの収納棚の扉がないのだ。シンク下の収納にも、吊り戸棚にもない。理由を聞いてみると「湿気がこもってカビが生えるから」という返事。

この扉なしキッチンに衝撃を受けていた石川さんに「来年にはキッチンを交換したいから、よろしくね」と顧客。しかし、色々調べてみても、扉のないシステムキッチンはない。顧客を満足させるキッチン提案はできるのか。石川さんは悩んでしまった。

そのことを率直に伝えたところ、顧客は通常のシステムキッチンを入れることを素直に納得してくれた。しかし、そこに新たなリクエストがきた。それは「吊り戸棚はなしで、キッチンの前に棚をつけたい」というものだった。

そこで石川さんは、壁から数十センチ手前にキッチンを設置することにし、奥に棚を造作することを提案。壁も塗装し直し、レンジフードも交換した。費用は約150万円かかったが、「全部、思い通りになった」と顧客はすごく喜んだ。

「一番嬉しかったのは、家族みたいな人だから、と言われたこと。本当に喜んでもらえて良かったです」と石川さんは話す。

▲「収納の扉をなくしたい」とリクエストした顧客のキッチン。システムキッチンを入れたが、吊り戸棚はなくし、代わりにオープンに収納できる棚を設置。棚板の下にも照明を付けて、手元を明るくした。さらに棚の高さは「DVDを見ながら料理がしたい」という要望に応えて、モニターが入る高さに設定。調理用具がひっかけられるよう、S字フックがかけられるポールも設置するなど、顧客のリクエストをすべて実現した



クレームが来ないよう普段からまめに連絡

「こまめにお客様とコミュニケーションを取れば、大抵のクレームは回避できると思っています」と石川さん。クレームに繋げないよう、毎日の行動が大切だと考えている。

ある時、給湯器の交換で製品が届かず、2ヶ月間も待ってもらったことがあった。その間、石川さんは何度も問屋に連絡。顧客には1週間ごとに「今、問屋さんに問合せをしているので、もう少しお待ちください」と電話をし続けた。この電話をしなければ、いつかクレームにつながると考えたからだ。納品がわかった段階で、顧客にすぐに電話し「納期、わかりました。本当にお待たせしてすみません!」と連絡した。

こうしたこまめな対応を心がけている石川さんだが、「すぐにやることを忘れてしまうので、気がついたらすぐに行動するようにしています」と話す。スケジュール帳や付箋に常にやることを書いて、即実行するようにしている。そうした時間が取れるよう、予定の組み方も工夫している。

「自分ができる仕事のキャパシティはわかっているので、今は、あまりアポイントを入れすぎないようにしています。商談は1日3件まで。以前は5件入れた時もありましたが、ピリピリして顔が怖くなってしまいました。3件なら現場でトラブルが起きても対応する時間が取れます」

余裕を持ったスケジューリングが、逆に仕事の効率を上げている。

今後は、今と変わらない営業スタイルで、仕事を続けていきたいと考えている石川さん。「年齢も年齢なので(笑)、無理せず、体への負担も考えつつ、このまま皆さんと仕事を続けていけたらと思っています」と話している。


▲石川さんが愛用しているアイテム。特に、付箋は自動車を運転している時に電話がかかってきたら、停車してすぐにメモできるよう、自動車の中にも置いている

▲石川さんの手帳の中身。マーカーで線を引いているのは、各工事の工期。どの工事がいつから始まり、いつ終わるのか、きれいに色分けして管理している



リフォマガ2021年11月号掲載

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