【THE SHOKUNIN】自分がここに住みたいと思える施工を心がけています

【フローリング職人】山本 博之さん(36歳)

リフォームの営業担当者にとって、熟練の職人さんは大切なパートナー。今回登場するのはフローリング職人の山本博之さん。競技会でも優勝する腕前を持った若き職人だ。

撮影/Photoguider-Japan



小さな役物が入らないよう割付を考え抜く

2020年10月3日に開催された、技能検定1級者を対象とした「大阪府技能競技大会」。山本博之さんは木質系床仕上げ施工で優勝し、見事、大阪府知事賞に輝いた。

そんな凄腕職人の山本さんが、施工でこだわっているのが「割付」だ。壁の幅もフローリング材の幅も現場によって様々。そこをどう割り付けるかは職人に任されている。山本さんは細い板がなるべく入らないように心がける。その方が仕上がりがきれいだからだ。貼った面積=工賃となるため、スピード重視の職人も多い中、山本さんは「自分が住みたいと思う施工をしたい」と、小さな役物が入らない割付を考え、一枚一枚丁寧に確認し、手早く作業を進める。

「長手方向は細い役物を入れざるを得ないことが多いが、短手方向は職人のひと手間で9割以上は細い役物を入れずに済む」と山本さん。

隙間を埋めるボンドコークもなるべく使用しなくても済むよう仕上げるのが山本さんの流儀だ。真っ直ぐに見えても、実はコンマ数ミリの差がある部材同士で施工されている室内を、隙間なく埋めるのは至難の技。

「コークは少量で済むよう、鉋(かんな)で削って調整し仮並べをします。手間はかかりますが、コークを打つ時間が短縮されるので、これが最速だと考えています」

フローリングを貼るウレタンボンドは、表面に付くと取れない。しかも後から遠目で見るとベタベタと光って見える。昔はワックス仕上げが多かったのでごまかせたが、今はノンワックスの材料が増えたので目立つ。山本さんはウレタンボンドが表面に付かない仕上げにもこだわる。

かといって、きつめに貼りすぎると、フローリング材は伸縮するので、後々床が盛り上がってしまう。そこをうまく調整するのが腕の見せ所だ。

▲競技大会の当日は、年少の息子の運動会の日と当たっていた。「毎日、運動会の練習でクタクタになっている息子を見て、絶対に優勝しようと思いました」。しかし、当日は気合いが入りすぎ、体が固くなってしまった。妻からLINEで息子の姿を送ってもらい、気持ちがほっこり。リラックスし、集中を切らすことなく競技をやり切ることができた



タイルの魅力に惹かれ家具・雑貨店をオープン

山本さんはフローリング職人の他に、家具職人の顔も持っている。始めたキッカケは、3年前の中古マンション購入だ。山本さんは、自ら玄関やダイニングテーブルなどを、タイルを使って施工。「タイルの魅力にすっかりハマってしまいました」と山本さん。仕事の合間に制作を続け、2020年7月、木とタイル専門の雑貨shop「ヤマモインテリア」をネット上でオープンした。

「現場で余った廃材をもらってきて使うこともありますね。フローリングの仕事を始めた頃から、余った建材が捨てられてしまうのを見ていて、もったいないとずっと思っていましたから、少しでもゴミを減らせたらと思っています。家具や雑貨の制作は趣味の延長ではありますが、利益を上げられたら嬉しい。ゆくゆくは実店舗も出してみたいです」

▲山本さんの作品。リメイクタイルチェア(上)と、鍋敷にもなるフリートレー


▲ヤマモインテリアの倉庫



山本さんが愛用している道具

1 生ゴムハンマー:隙間ができないようにフローリング材を寄せるのに使用。柔らかく、建材が凹まない

2 定規

3 膝当て:ずっと膝を付いて作業をするため

4 鉋(かんな):幅を調整するために使う鉋は、弟子入りした時から愛用している

5 スコヤ



推薦の言葉

真鍋工作所 溝口雄貴さん

真鍋工作所は、リフォーム全般を請け負っている会社です。初めて山本さんに仕事をお願いした時、まずびっくりしたのは作業の「速さ」です。他の方の3倍の速さで、しかも文句の付けようがない仕上がりだったのです。

なぜそんなに速いのかというと、山本さんは現場に入ると人が変わります。普段は冗談をよく言う、当たりの柔らかな方なのですが、作業が始まると気迫のスイッチが入ります。

また、段取りの手際もとてもいいです。材料を間配りし、早く施工をするための細かな雑工事を先に済ませてから施工を始めます。その点も他の職人さんとは違うと思います。

山本さんの人柄を一言で言うと「真面目」。現場にはいつも1時間前には入って準備をされています。今は家具の仕事も始められていて、その活動も応援したいですね。

山本さんはギターが趣味。年に1回ライブも開いています。私は山本さんと同い年で音楽好き。ライブにはラップで参加させてもらっています。



山本さんからリフォーム営業担当者にメッセージ

「こうしてもらうと嬉しいなぁ」

空き家なのか、在宅なのか、という最低限の情報は教えてほしいです。在宅なら養生や掃除機が必要になりますし、タンスを動かすための人員も必要です。

それと管理人さんが厳しいマンションも先に教えてもらえると助かります。早めに作業を始めたいのですが、9時にならないと入れないとか、電動工具を使える時間帯が決まっているとか、わかっていると段取りがしやすい。それとマンションの駐車場が使えるかどうかも先に知らせてもらえるとありがたいです。


「こんな営業さんはすごい!」

空き家の現場で、部屋がきれいだと「この営業さんはやり手だな」と思います。前の職人さんのゴミが片付けられているのは、きちんと管理できている証拠。以前、施工予定のリビングにゴミがあり、別の部屋に養生をしてゴミを移動させないといけない現場もありました。時間がもったいなかったです。

今回推薦の言葉をいただいた溝口さんは、そうしたことがありません。現場のことをいつも考えてくれていると感じています。



リフォマガ2021年1月号掲載

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