今月の輝く!リフォームセールス~お客様の困りごとに本気になって行動します


お客様の困りごとに本気になって行動します

今回登場するのは、これまで3000件ものリフォームや新築工事を手がけてきた、ベテラン営業マンの稲葉好彦さん。定年退職後に再就職した店舗でも、年間売上を倍増させる活躍をしている。


▲佐合木材 リファイン可茂(岐阜県可児市)店長 稲葉 好彦さん(62)


▲PanasonicリフォームClub リファイン可茂の外観



父親の介護経験活かし将来を見据えたプランも

稲葉さんは競合他社との相見積もりの時、顧客の要望に沿ったプランの他に、必ず「これからの暮らし方」も考えたプランを2〜3案持っていくようにしている。顧客の要望に応えるだけでは、どの会社も同じようなプランになってしまい差別化にならないからだ。

最後の1社になるために、今後の生活で起こりうる色々な問題を考えて提案する。この顧客に初めてプランを提案する瞬間が営業活動において勝負所だと稲葉さんは考える。

例えば、60代の顧客がキッチンを取り換える場合、10年後の70歳になった時の状態に思いを巡らす。踏み台が必要になるような高い位置の吊り戸棚は必要ない。火の消し忘れがあると危険なのでコンロはIHにした方が良い。

また、今はお金に余裕があっても、この先はどうなるかわからない。

「家の塗装が必要になる10年後、費用を出すことができるのかはわかりません。それなら外壁塗装も一緒に済ませておいた方が安心ですよ、とも伝えます」

稲葉さん自身、父親の介護を経験している。それに伴い、自宅を三世帯住宅(稲葉さん家族、稲葉さんの両親、義母)に建て替えた。

「ベッド生活になると、トイレに行くのも一苦労。うちの父親は頑固で、ポータブルトイレを使いたがりませんでした。そうした経験から、将来寝室の押し入れをトイレに改装することも想定し、配管だけを済ませておくという提案もさせていただいています」

こうした親身な提案で相見積もりを勝ち抜き、4000万円を超える物件を手掛けたこともあった。また、契約に至らなくても「このリフォームは稲葉さんにお願いしたい」と別の依頼を受けることも多い。稲葉さんが入社する前の同店の年間売上は1億円ほどだったが、入社してからは倍の2億円になっている。



アフターメンテから受注 90%以上が紹介案件

工事が終わってからの「アフターメンテナンス」が受注のチャンスと話す稲葉さん。転職後、最初に稲葉さんが行ったのはアフターメンテナンスのための人材確保だったほどだ。稲葉さんは1ヶ月後、半年後、1年後など定期的にOB訪問をする他、いわゆる近くに来た時に立ち寄る「ちょい寄り」も意識して行っている。「台風が来そうな時などは、特に意識して声かけをしています」と稲葉さん。『いつも気に掛けてくれてありがとう』とOB顧客に思ってもらえることが、次の大きな仕事にもつながっていく。現在、稲葉さんが担当する案件の90%以上が紹介によるものだ。

「お客様目線で物事を考えて、業務以外のことでもお客様の困りごとに対して本気になって行動するか。それが紹介につながっていると思っています。大変ありがたいですね」



若い顧客にはローンや固定費の話を

年に数棟だが、リフォームの顧客から新築物件を頼まれることもある。この前もある顧客から息子さんの新築を頼まれ、土地選びからローンに関する事まで、親身に相談に乗った。新型コロナウイルスの感染予防から、玄関近くに手洗いと着替えができるスペースを設けることも決まった。

「特に若い方にはローンの話をしますね。家のローンだけでなく、これからは固定資産税もかかりますし、光熱費もかかる。だったら太陽光発電システムを入れたり、断熱や防寒の省エネ商品を使ったりして、できるかぎり固定費を削減できる方法を考えます。併せて保険の見直しを提案することもありますね。せっかく家族が集う家を作ったのに、欲しいものを我慢したり、お金のために働くばかりでは意味がありません」

従来若い人と話す機会が少なく、若年層の顧客が実は苦手だったという稲葉さん。それが親の介護を終え、今度は長男家族と同居することになって、新たな発見があったと言う。

「我が家は息子2人の男系家族。それが長男家族は長男・長男の嫁・孫娘2人の女系家族なんです。仕事から帰ってきて、お風呂の脱衣所にある洗面所で手を洗おうとしたら、女性たちがお風呂に入っていて使えないこともありました。若い世帯との同居は、脱衣所と洗面所は別にした方がいいと思いましたね」。こうした自身の経験が、家族構成に合わせた提案ができるきっかけとなっている。

他にも新しいアイデアを得るため、展示場に足を運んだり、名古屋まで雑貨を見に行ったりするなどアンテナを広げている。



子ども部屋は大きくなるまで仕上げない

未就学児がいる若い世帯のリフォームでは、稲葉さんは子ども部屋の仕上げはしないよう提案をしている。子ども部屋を作っても実際に使うようになるのは小学校高学年くらいから。それまでにクロスまで張って仕上げてしまうと、壁に落書きをしたり、クロスが切れたりしてしまうことがあるだ。

「子どもに自分でクロスを選ばせたら、その後大事に部屋を使うと思うのです。そのくらいの年齢なら、自分の部屋のリフォームにどのくらいお金がかかるのかも理解できるようになりますから、親への感謝の気持ちも持ってもらえたらいいなと思っています」



自称「特級建築士」 不況時こそチャンス

以前の会社にいた時は数千万円のリフォームは当たり前。リフォームの依頼は多く、顧客を待たせてしまうこともあったと言う。

それに対して、現在の会社はちょっとした補修で数万円からという案件が多い。金額は数万円かもしれないが、100件あったら数百万円にものぼる。稲葉さんは「謙虚な気持ちで真面目にお客様と接していたら、必ず自分を信じてくれるお客様がたくさんできると確信しています。不況時こそ、小さな店舗が勝ち組になるチャンスだと考えます」

これまでプランニングしてきた物件は3000件以上。一級建築士の資格はないが、自称「特級建築士」と冗談を言いつつも、顧客に合った暮らし方提案をしてきた。そのことには誰にも負けない自信とプライドを持っている。

▲Panasonicリフォーム Clubリファイン可茂のキッチン。ここで料理教室を開くこともある



稲葉さんが現場調査の時に持っていくもの

打合せ記録簿(方眼紙付き)/ボールペン/鉛筆/消しゴム/消せるペン/スケール/L型定規/方位計測器/採寸計測器/抗菌スプレー/マスク/カッターナイフ/乾電池/照明器具/掃除道具/雑巾/荷物置き敷物/掃除機/マーカーペン/カメラ(スマホも利用)/除菌ティシュ/スリッパ/拡大鏡/マスキングテープ/下地探し器/ドライバーセット/ビー玉/ゴルフボール/ハンマー/ヘルメット



お客様貸し出し用グッズ

キッチンや収納家具等の配置が変わる時は、顧客に自宅で寸法を確認してもらうよう、グッズを貸し出している。グッズはポーチにマスキングテープ、ハサミ、ボールペン、メモ用紙、付箋、スケール、カッターを入れたもの。床に寸法通りにマスキングテープを貼ってもらい、実際の感じを体感してもらう。貸し出すと言ってもほとんどそのままプレゼント。いつも車に数セット用意している

▲手紙を書くのが好きな稲葉さん。手書きの手紙が少なくなった今、顧客に感謝の手紙を書くことで、他社と差別化を図っている



リフォマガ2020年12月号掲載

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『リフォマガ』は、株式会社リフォーム産業新聞社が発行する現場担当者向けの情報誌です。 リフォーム営業マンに役立つ営業テク、現場調査の方法、商品情報を発信します。 雑誌『リフォマガ』は毎月15日に発行。年間購読料8,800円。(税込・送料込)

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