今月の輝く!リフォームセールス~常にお客様が喜ぶかを基準に考えています

好きな言葉は「それでお客様は喜びますか?」
常にお客様が喜ぶかを基準に考えています

今回登場するのは建設会社の3代目、名取和正さん。ゼネコンで培った経験を活かし、公共工事やマンションの大規模修繕などへと業務の幅を広げることに成功している。一時は家業を継ぐかどうか苦悩した時期もあったという名取さん。営業マンとして大事にしていることをインタビューした。


▲名取建設工業(神奈川県横浜市) 取締役 名取和正さん(33)

名取建設工業の3代目として1986年、横浜市に生まれる。初代である祖父・桂(かつら)さんは長野から上京し、リアカーに材木を積んで家を建てる時代を経て、会社を拡張した人物。日本大学理工学部土木工学科を卒業後、大手ゼネコンに入社。私鉄と東京メトロの直通運転を実現させるため、駅のホームの延伸工事に携わる。その後、自分のやりたいことを見つけるために退職。26歳の時、名取建設工業に入社。社長である2代目の父・嗣朗さんの下、取締役として営業・現場監督などの業務を務めている。中学生のころ、競泳で全国大会優勝、今もトライアスロンなどに挑戦しているスポーツマン。



ゼネコンでの経験で家業の業績を飛躍的に伸ばす

ビルやマンションの改修工事や一般住宅の新築・リフォームを手がける名取建設工業。同社の3代目である名取和正さんは、ゼネコンでの経験を活かし、一般住宅以外にも工事の幅を広げ、順調に売り上げを伸ばしている。

名取さんが入社する以前の同社の仕事は、ゼネコンの下請けや、地元の一般住宅のリフォーム工事、工場やビルの改修が主だった。

それが名取さんが入社して数年後には、公共工事やマンションの修繕などが5割ほどを占めるように変化した。それにはあるターニングポイントがあった。

名取さんが入社して1年ほど経った頃、ある取引先から「財務省の空調機器の取り替え工事」の依頼があった。

名取さんは内装工事と外部の鉄骨工事の入札に参加。

「ゼネコン時代、公共性の高い工事の施工計画の立て方や工程表の組み方、お客様との打ち合わせの方法などを経験していたので、問題なく工事を進めることができました」。

その後、「どういう工事を請負ったら、会社としての売り上げを伸ばすことができるのか」を考え続けた名取さん。異業種交流会に顔を出し、色々な方の紹介で一般住宅はもちろん、店舗の改修や学校や病院など、様々な工事を請け負うことにした。

そこで、結論として公共工事とマンションの大規模修繕の割合を増やしていく考えに至った。

「公共工事は書類の作成方法など大変な面もありますが、一般住宅や店舗の工事のように、お客様のこだわりがない分、こちらがきちんと施工管理を行えば、進めやすく、利益率も高いという側面があります」と名取さん。3年前から少しずつ公共工事を増やしていくことに成功した。



「できない」という選択をしない
トラブルの時こそ知恵を

公共工事でも異例の事態が起こることがある。

学校のトイレの工事をしていた時のこと。工事の範囲外の配管にも問題があることがわかった。しかし、その部分の工事に予算がつくかわからず、翌年1月竣工予定の工事は9月から11月の約2ヶ月間ストップしてしまった。

とはいえ、このままではトイレが使えない。予算が出るか未定のまま工事を再スタート。通常なら3月竣工のスケジュールだったが、入試があるために1月半ばまでに工事を終了しなければならなかった。

「ゼネコン時代、『できない、という選択をしない』という考え方で、教育されてきましたから、どんなに時間的に厳しくても、職人さんの手配が難しくても、なんとか最善策を提案するように鍛えられました。この時も職人さんに入ってもらう時間帯や場所を、パズルのように組み合わせて、3日間の工程を1日で終わるように苦肉の策を積み重ねていきました」

無事、トイレの改修工事は1月半ばに竣工。逆境の時こそ、知恵を絞り出すのが、名取さんのやり方だ。



会社を継ぐ気はなくゼネコンに就職

名取さんは学生時代「親の会社を継ぐのは逃げ」という考えがあり、家業に戻ることに抵抗心を抱えていた。一方、橋梁が好きで、将来は大きな建造物の建築に携わりたいと思っていた。大学卒業後は大手ゼネコンに就職した。

そこで3年間、名取さんは駅のホームの延伸工事を担当。終電後に線路を外して工事をし、始発までに線路を元に戻す。線路が3ミリ以上沈下すると電車が止まるという、高い精度が求められる仕事をしていた。しかし3年後、「自分は本当にこの仕事を続けたいのか」と悩み、会社を辞めた。

「今でこそ、人と親しく話をさせて頂くことは好きですが、学生時代は友達が少なく、社会人になってからも仕事以外の友人はいませんでした。こう見えて、超閉鎖的な性格だったんですよ(笑)。しかし、社会に出てみると、交友関係が広い人間の方が、仕事においてもプライベートにおいてもうまくいっていることに気付いて、これは自分が変わらないと、何がやりたいのかもわからなくなってしまうと思ったのです」

退社後、海外の自己啓発セミナーに参加したり、わざと心が折れそうな訪問販売に挑戦してみたり、今までとは違うものにトライした名取さん。ゼネコンを辞めてから約1年間の経験が「今の自分を作った期間」と名取さんは話す。

次第に人脈も広がっていった頃、父親から「会社に帰ってこないか」と誘われた。迷っていた名取さんを後押ししたのは、知人の「やりたいことは会社を継いでからでもできる。親の仕事を継ぐのは親孝行」という言葉。26歳の時に、未来の3代目として入社した。



マンション修繕に付加価値漏水調査に活路

名取さんが好きな言葉の一つに松下幸之助さんの「それでお客様は喜びますか?」がある。名取さんは工事を進める中で壁にぶつかった時、〝それで〞お客様は喜ぶかを基準にして、対策を考えるようにしている。

例えば、マンションの大規模修繕で相見積もりを出す時がそうだ。第一に考えるのは「長期的に考えて、コスパがいいかどうか」。ただ安い金額を提示するのは、お客様のためにも、会社や一緒に仕事をする協力業者にとっても、良いことではないと考える。

「マンションを専門に請け負っている業者とでは、金額では争えません。私たちの工事には付加価値があることを伝えるようにしています」

そこで今同社で力を入れているのが、電気抵抗試験による漏水調査だ。漏水箇所と、その原因と思われる箇所にセンサーを接触。水の通り道ができている場合、電気が流れるため、原因の特定がしやすい。

名取さんは「科学的な数値を示して、漏水の原因を証明し、一つ一つ原因を潰していくやり方で、ほとんどのケースで漏水を止めることができています」と話す。

しかも、調査費や工事費は損害保険で賄う方法も併せて提案。マンションの修繕積立金を取り崩さずに修理ができる方法を親身になって考える。

「お客様が一番ストレスを感じるのは漏水工事をしたのに、また水が漏れてやり直しになること。私達が欲しいのは、『信用』なんです。確実な工事でマンションの管理会社や管理組合の方々に信頼してもらい、相見積もりの際、選んでいただけるように努力しています」

▲▼マンションでの電気抵抗試験による漏水調査の様子。屋上の排水ドレン(左写真)と、共有部の廊下(右写真)、漏水している1階の部屋の屋根裏(下写真)などにセンサーを取り付けて計測した結果、電気が流れ、そこから水の通り道ができていることがわかった


インスタグラムで営繕方法の情報を発信

現在、会社の売り上げは年間約4億円。それを2024年までに10億円にすることを目標にしている。

今年からはインスタグラムで「建物営繕研究所」を立ち上げた。マンションやビルを長く存続させるためには、建物のどんな部分に気を付ければいいか、情報を発信している。

「このインスタグラムは、わざとカジュアルな書き方をしています。マンションの管理会社や管理組合など、防水や建物に関わる方々へ発信できるプラットホームを作っていきたいと考えています」と名取さんは話している。



リフォマガ2020年10月号掲載

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