リフォーム現場のトラブル解決
リフォーム解体新書
第19回(最終回)耐震リフォーム(在来木造)
ドキッとする“解体あるある”を集めました
「工事現場は場数を踏んで覚えるもの」と言われますが、現場の数だけ発見があると言えるくらい個々に違いがあります。中には「解体してびっくり!」ということもあるでしょう。
そこで、場数をたくさん踏まずとも「見えない必要工事」を予測できるよう、工事現場にありがちな解体あるあるを集めてみました。
これまで大きな地震の教訓から耐震に関する建築基準法の見直しがされてきました。大きな改正は1981年6月1日に施行され、その日を境にしてそれより前に建築確認通知書が交付され建築された建物を「旧耐震」、以降に交付され建築された建物を「新耐震」の建物と区別しています。ここで注意したいことは、木造住宅は2000年6月1日に、より厳しい耐震性を求めた「2000年基準」と呼ばれる耐震基準の改正が行われたことです。「ウチは新耐震の建物だから」と安心せずに、耐震工事を行うことが大切です。最終回となる今回は耐震工事の時に見つかることが多い「びっくり体験」を紹介します。小さい事と済まさずに、大きな被害に繋がらないよう適切に処理しましょう。
《事例1》
エアコンのダクト穴が筋交いを貫通していた
耐震工事で壁を解体して発覚
耐震工事で新たに耐力壁をつくるため、外壁に面した内壁を解体しました。暗い現場に、丸く開いたエアコンの穴から光が差し込んでいます。ふとそちらに目をやると、なにやらいやな予感が。「えっ筋交いに穴あけちゃってる?」。エアコンのダクト用に開けた穴が筋交いのちょうど真ん中を貫通しているのです。大工さんは「その筋交い、新しいのに入れ替えないとだめだよ。筋交いをよけずに穴をあけちゃったんだね」と言います。計画になかった場所なので、できれば穴の部分を補修して済めば良いのですが、大工さんが言うように、こういう場合、新しい筋交いに入れ替えないといけないのでしょうか。
【解決策は?】穴があいた筋交いは補修ではなく交換を
エアコンのダクトを通すために開けた穴が筋交いを貫通していると、建物が大地震に見舞われて押しつぶされそうになった時、強度を発揮できずに折れる心配があります。例えば埋め木をするなどして補修をすれば穴が開いたままにするよりは強度が増すでしょうが、果たして地震に耐えられるか保証はできません。つまり保証できない工事はやるべきでないということです。ましてや建物の安全に関わることです。追加で費用がかかってしまいますが、施主に説明をして、筋交いを入れ替えることをお勧めしましょう。穴あけを行った当時の保証の問題もありますので、穴を開けた業者がわかれば交換工事を行う前に連絡をとって協議してもらうとよいでしょう。
【どうすれば事前にわかる?】図面を見てエアコン位置に筋交いがあるか確認
事前調査時にエアコン位置に筋交いがあるか図面を見て確認を。筋交いがシングルで入っていれば、その方向も図面に示されているでしょう。筋交いがある壁にエアコンがある場合、施主にダクト用の穴が建築当初から開けられたものか、後からエアコン業者などが開けたものか聞き、建築当初から開いていれば大丈夫と考えられます。イラストのようにダブルで筋交いが入っている場合、奥の方に位置する筋交いはセンサーを当てても反応しないことがあり、エアコン業者も穴あけに苦労するようです。疑わしい箇所があれば、着工時にエアコンを外して確認をとるようにします。
▲ダブルの筋交いは、奥の筋交いがセンサーに反応しない場合もある
[こんな現場もあります]2×4住宅でスタッドにエアコン穴
2×4(ツーバイフォー)住宅は、木造であっても筋交いがありません。在来木造に比べてエアコンのダクト穴を開けやすいのですが、450㎜ごとにあるスタッド(イラスト参照)は壁構造の2×4住宅の重要な部材で、このスタッドに穴を開けてしまうと、構造体である壁にダメージを与えてしまいます。実際に2×4住宅でもエアコンの穴開けでスタッドに穴を開けてしまう事例があります。2×4住宅は筋交いが無いからといってもエアコンの穴開けには細心の注意が必要です。
▲2×4住宅には筋交いは無いが壁を支えるスタッドに注意
リフォマガ2024年11月号掲載
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