KURASHIをたのしむVol.8 折り合いをつけると犬との暮らしはもっと快適に

今回紹介するのはミサワホーム総合研究所で保育環境の研究に従事する傍ら、「犬と暮らす家」のセミナー講師を務める長谷川恵美さんだ。10年ほど愛犬と暮らした経験もある長谷川さんに、犬との暮らしの魅力や住まいの工夫を聞いた。


▲ミサワホーム総合研究所(東京都杉並区)空間デザイン研究室 主任研究員 長谷川恵美さん



犬と暮らす家作りの3ポイント

最近は犬も室内飼いが主流になり、共生型住宅も増えている。ミサワホーム総合研究所の主任研究員・長谷川恵美さんは、不定期に「犬と暮らす家の工夫」に関するセミナー講師を務め、主に環境について取り組んできた。犬と暮らす住まい作りには3つのポイントがあるという。

1つ目は〝人も犬も快適な環境作り〞。

「犬は本来、群れで行動する生き物なので、家族の近くにいることが安心につながります。リビングなど家族の気配を感じられる場所に、居場所を作ることをおすすめしています」。棚板収納など、造付収納家具の有効活用を提案する。

犬は膝や腰がもともと強くないので、滑りにくい床材を選ぶ。また犬は飼い主を見る際、上を向くため、照明の光源が目に直接入りにくいように間接照明を使うなど器具選びを工夫する。地震などに備えて、収納扉に耐震ラッチを付けたり、ケガをしないように危ないものはしまっておく。臭い対策は、温まった空気が上昇する、空気の流れを利用し、トップライトや高窓をつけて空気を外に逃がす。消臭機能付き建材は、部屋の中で面積の大きい天井への使用を推奨する。

次に〝掃除しやすい美しい暮らし〞。入隅はほこりがたまりやすいので少なくし、凹凸のない家具のレイアウトを工夫しておくと掃除がしやすい(下図)。

▲左が入隅・出隅の多い家具レイアウト、右が入隅・出隅の少ない家具レイアウト(緑色部=家具)。家具を右図のように配置することで、掃除に手間のかかる入隅を減らし掃除がしやすくなる。


3つ目は〝住まい作りの楽しみ〞。長谷川さんは、「共生建材で固めることがペット共生住宅ではなく、ライフスタイルや好きなインテリアを大切にして上手に建材を使うことをおすすめします。例えば掃除をきちんとしたい人は、床は犬の抜け毛が目立つ色を選ぶとか、自分がどうしたいのか、犬にとってどうなのかの折り合いをつけていくとよいですね」とアドバイスする。

▲リビングの一部(写真右側)は1畳程度の土間スペースとなっており、ここが犬の居場所。土間の奥に見えている勝手口ドア(格子戸)からは、直接屋外へ出ることができるようになっていて、(人の玄関動線とは別に)犬用の散歩動線が確保してある。

▲土間の左側・階段下のデッドスペースを活用した犬の居場所。階段下に設けた理由は、「昔洞窟などをすみかとしていたという話から、天井が低いところの方がより落ち着くといわれている」から。



愛犬が弟のような存在

そんな長谷川さんは小学2年から高校卒業まで犬を飼っていた。近所で生まれた子犬を譲ってもらったのがきっかけだ。

「兄がいましたが歳が離れ、近所の子供も歳上ばかり。周りで一番歳下の私は、子犬が弟のような存在でいつも一緒に遊んでいました」

ある日、犬が脱走したことがある。家族で探し回ったが見つからず、その日の夕飯は暗い雰囲気に。

「犬がいないだけでこんなに落ち込むのだと思いました。一晩悲しい気持ちで過ごすと、翌日犬が見つかり、みんなで号泣して喜んだのを今もよく覚えています」と話す。

毎日犬を散歩させていると、「かわいいね」とか「毛並みいいね」といろいろな人に声をかけられ、何気ない会話が生まれる。「愛犬がいたから、近所の人とのコミュニケーションが生まれ、自然と挨拶などの大切さが身についていったような気がします」

▲大型犬を想定した足洗い場。飼い主さんは立った姿勢で犬の足を洗ってあげることができ、腰に負担がかからない。

▲犬のグッズをしまうための玄関収納。



住宅の子育て空間提案も

現在は保育環境の研究開発をメインに、住まいと健康について取り組む長谷川さん。「どんな環境が気持ちよく過ごせるのか」といった空間が及ぼす心理的側面を研究する。

研究の一環で保育所に出向き、一日中、先生と子供の行動観察を行うこともある。先生と子供のやり取りや空間をどう使っているのか記録をとり、「保育の流れの中で、どのような空間だと活動の流れがスムーズにいくのか」を考察する。

この3月に、社内の学位取得制度を利用し、日本女子大大学院人間生活学研究科の博士課程を修了した。平日の夜間、土・日に家族の協力を得ながら勉強時間を捻出した。

「研究テーマは保育環境なので保育施設での設計提案はもちろん、住宅における子育て空間の提案にも展開していきたい」

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