KURASHIをたのしむVol.22 一輪の花で暮らしはぐっと華やぐ

今回紹介するのはフローリストの窪田美菜さん。築65年の連棟式住宅を自宅&店舗にリノベーションし、2021年4月に花屋「GERMER」をオープンした。パリスタイルの魅力や暮らしへの取り入れ方を聞いた。

▲GERMER(東京都中野区) フローリスト 窪田美菜さん

東京都出身。バラ専門店やホテル専属店など国内の花屋で経験を積んだのち、2018年にパリへ1年間留学。2021年4月に花屋「GERMER(ジェルメ)」をオープンし、パリスタイルの魅力を伝える。インテリアスタイリストの夫とデザインユニット「F.I.N.D UNIT」を結成し、花や植物を取り入れた空間を提案している。



パリに憧れ一念発起

築65年の連棟式住宅のガレージ部分を改装した花屋「GERMER(ジェルメ)」。内壁を墨色の漆喰塗装にし、一歩入ると異空間のようだ。

昨年4月、自宅で花屋を始めたフローリストの窪田美菜さんは、マンツーマンのレッスンやワークショップを開催してパリスタイルの魅力を伝えている。高校を卒業しトリマーの仕事を経験したのち、以前から興味があった花屋に転職。バラ専門店やホテル専属店などで働き、2018年には憧れのパリへ留学した。

「たまたま本屋で手にした雑誌の『パリのお花屋さん』特集を読んで、パリへの思いが募って」。当時窪田さんは29歳。旅行・就労を認めるワーキングホリデービザは30歳までしか取得できずぎりぎりだった。「勤めていた花屋を辞めて、割のいい家電量販店で1年間働いて留学費用を貯めました」と並外れたガッツの持ち主だ。

「パリの花屋はお洒落なアンティーク家具で飾りつけ、内壁はコンクリートが多く、ほとんどの花屋が自作で仕上げています。実際に見てヒントになりました」

パリスタイルは、田園に咲いている花を想像し、正面に花を向かせるのではなく、風が吹き植物たちがなびかれている「花の動きの流れ」を意識して作る。花材は、大輪の花だけでなく小花や枝物、多めに葉物を使い、ミックスすることで生き生きとした自然さをだすのが特徴だ。

▲パリの花屋さんのような店構えの「GERMER(ジェルメ)」。元々ガレージだった部分が花屋へと生まれ変わった。什器はパリのお花屋さんをヒントに、フランスアンティークのキャビネットやトーネットチェアなどを中心にディスプレイしている

▲花や葉物、枝物をあしらったパリスタイル。シックな色味と自然な花の動きが美しい



昭和レトロからモダンに

窪田さんの自宅は、2階建て長屋のコンクリート構造で、1階は店舗とリビングダイニング、2階はアトリエや寝室にリノベーションした。費用は約1300万円かかったが、戸建て住宅より安く購入でき、負担にならなかったという。

「ボロボロで住める状態ではなかったのですが、間取りが面白く、最近では使われないガラスやデザインが味わい深くて気に入りました」。プランやデザイン、素材は夫妻で決めた。

特にこだわったのはキッチンだ。狭い台所だったので、日本メーカーの規格のものが使えず、IKEAのL字ユニットを選択。壁は名古屋モザイクに発注してタイルで仕上げ、北欧風の可愛いキッチンに生まれ変わった。

▲濃い色のテーブルにデルフィニウムの可憐さを



インテリアとの調和は色合いで

窪田さんは、インテリアスタイリストの夫とデザインユニット「F.I.N.D UNIT」を結成し、花や植物を取り入れた空間を提案している。

「インテリアとの調和は〝色合い〞が大切です。例えばナチュラルな家具なら淡い色合いの花を選び、濃い目のテーブルならレースフラワーやデルフィニウムなど小花を添えるとやさしい雰囲気に変わります。空間に調和するように色を抑えて自然さを出すと癒し効果を演出できます」

花の魅力を自らの暮らしで体現している窪田さん。玄関やダイニング、キッチンに季節の花や植物がさりげなく彩られている。「リビングテーブルの上に大輪をどんと飾るよりも、小花や葉物をあちこちに置いてどこにいても植物の気配を感じていたい」と話す。

花を飾るのは、直射日光やエアコンの風が当たらない風通しの良い場所がおすすめだ。「手近なガラス瓶に葉物を挿すだけでも素敵。花一輪なら、口の狭い花瓶に太陽に向けて生けると自然で可愛いです。たった一輪飾るだけで、空間が華やぎます。まずは小花からトライしてみてはいかがでしょうか」

▲白を基調とする北欧風の可愛いキッチン



リフォマガ2022年9月号掲載



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